シャンパングラスをあわせて、アタシは言った。
「何か面白い話、してくださいよ~」
笑われた。
「以前にも何度か、同じことを言われた覚えがあるね」
だって、話したいことがいっぱいありすぎて、こう言うしかなかったんだもん!!
でも、やっぱりアタシの方がいっぱいしゃべった。
今の仕事のこと、銀行時代のこと。留学してた頃のこと。
そして・・・ビジネススクールに入学してすぐに気づいて、ずっとずっと伝えたかったことをやっと伝えられた。
「アタシは銀行で、自分がどんなに大切に育てられたかが、わかったんです」
そのあと、留学したあと少し自分が変わったかな・・・と思ってる小さなことを話したあと
彼が言った。
「いやー、成長したね」
いつものとおり、おちょくり口調に聞こえたけども、嬉しかったなー。
ワインのせいじゃなく、ぼやーっとしてしまった。
仕事をしていく上であまりにもその存在が大きくて、
何でもできる魔法使いみたいだと、私はあの頃思っていた。
そして、ミッキーマウスの映画じゃないけど、アタシはその弟子だった。
この師匠がいれば何でもできると思った反面、
どう努力しようとも、自分がその域に達するのは不可能に近い・・・なんてあきらめていた。
でもそれって・・・呪縛というか、かけられた負の魔法だったのかなって最近気づいた。
かけられた魔法をとくためには、魔法使いに会わねばならぬ。
そしてこの会合を企画して・・・・。
魔法をかけていたのは、師匠ではなく弟子自身だった。
薄々気づいていたことだったけども、アタシは自分の手で魔法をといた。
ここに来て、多分アタシのMBAはやっと一段落したのだろうと思う。
また別の術が放たれたような気もしたけど・・・・・。